2012年4月12日木曜日

ソーシャルコマースの可能性は?-Eコマースの変遷から読み解く(2)

大変長い記事であるため、複数回に分けてお送りしています。前回の記事はこちら





EC洗練期

2000年代後半、Eコマースはさらに洗練されていきます。Eコマース事業者側も価格競争での消耗を避けるため、利便性を向上することで、Eコマースに付加価値を与える取り組みを始めました。それが、「商品のお届け日の短縮」「送料無料」という点です。

富士通総研の調査レポート「インターネットショッピング2010」によると、利用したネットショップのタイプと選んだ理由の1位は価格、2位は送料・配送条件、3位はポイント・特典等という順番でした。

EC市場の現状とECへの取り組みのポイント(2)~アマゾン・楽天2強時代と大手小売の挑戦~(富士通総研ホームページコラム2011年4月12日)

商品のお届け日の短縮化は、利便性向上の顕著な例です。もともと、Eコマースは「いま欲しいに応えられない」という特性をもっています。その欠点を改善するべく、Amazonは早くから物流の効率化を進めていました。2005年には千葉県市川市、2007年には千葉県八千代市、2009年には大阪府堺市、2010年には埼玉県川越市に、それぞれ次々と物流倉庫を整備しました。これにより、今オーダーすれば明日届く、「欲しいときに手にする」にほぼ近い消費体験を実現することができるようになったのです。物流への取り組みは、楽天も2008年から佐川急便と組んで「あす楽」というサービスを行っています。

また、送料という点で見てみると、Amazonはもともと購入金額1,500円以上で送料無料としていたのを、2010年に完全無料化しています。これに対応するように、楽天も同年、楽天Booksの送料を完全無料化しました。いまや、消費者にとって、送料は無料が当たり前の時代なのです。

「商品のお届け日の短縮」「送料無料」のような物流の効率化による、ユーザーの利便性の向上は、当然のことですが規模の経済が働かない限り実現は困難です。実際、前掲の富士通総研の調査レポート「インターネットショッピング2010」で、利用したサイトのタイプ(直近1回)について尋ねたところ、楽天(42.2%)とAmazon(14.1%)で過半数を占め、楽天とAmazonの2強時代であると分析されています。Eコマースの洗練化は、市場の成熟化、寡占化と表裏一体であるといえます。

では、もはや新規参入の道は残されていないのでしょうか。これについては、もう少し後で考察していきたいと思います。

モバイルコマース勃興期

2005年前後から、インターネットの主戦場はパソコンだけではなくなります。i-modeの普及、携帯画面のカラー化、ユーザーの成熟によって、モバイルコマースが台頭し始めました。拍車をかけたのは、デジタルネイティブと呼ばれる、生まれて物心ついた時にはインターネットを使っている世代が、消費をし始める年代になったということです。デジタルネイティブのユーザーは、パソコンを立ち上げることですら面倒くさい。消費すら、携帯の画面上で十分なのです。

このことを象徴的に表すビジネスが、ゼイヴェル(2008年ブランディングに社名変更)のEコマース事業です。ゼイヴェルという会社名を知らなくても、「東京ガールズコレクション」という名前を聞いたことがある人はいるかもしれません。

少し古い記事ですが、東京ガールズコレクションとモバイルコマースについて触れた記事がありました。

東京ガールズコレクションでモバイル通販体験 ゼイヴェルが仕掛ける「クリック&イベント」戦略(2007年2月16日)
東京ガールズコレクションの最大の特徴は、蛯原友里や押切もえ、土屋アンナといった人気モデルが当日着た服を、その場にいながらにして携帯電話の通販サイトから購入できることだ。ファッションショーと携帯電話を組み合わせた「クリック&イベント」とでも呼ぶべき、新しいEC(電子商取引)の形態として注目されている。
ゼイヴェルの直近の売上高は残念ながら見つけることはできませんでしたが、2008年3月期で170億円ほどあると推測され(記事参照)バカにすることができないビジネスだといえます。

追い風をかけるように、2007年にiPhoneが発売され、次いでAndroid携帯も含めたスマートフォンが市場を席巻します。携帯の手軽さと、パソコンのようなコンテンツの表現力を兼ね備えたスマートフォンは、モバイルコマースをさらに加速させたことは言うまでもありません

本日はここまで。

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