大変長い記事であるため、複数回に分けてお送りしています。
EC洗練期・モバイルコマース勃興期が意味するもの
Eコマース市場が成熟化し、ビジネスモデル自体の洗練化が進んだこの時期。実は、ゼイヴェル(2008年に)の取り組みは、次のステージへの幕開けを告げるものでもありました。それは、それまでのECで購入されるものは「指名買い」「日用品」でしたが、ゼイヴェルは「ファッション」を売った、ということです。
「指名買い」では、ユーザーはすでに自分が何を欲しいのかを知っていました。「日用品」では、銘柄を指定することはなくても、何を必要としているのかはわかっていました。一番安い何か、一番売れている何かを買えば、ユーザーは満足していたのです。ところが「ファッション」は「センス」が売りのビジネスです。ユーザー自身が、「リーバイスの903が欲しい」と指名買いすることはめったにありませんし、ジーパンが欲しいからと言って、一番安い何か、一番売れている何かを買えば満足するというものでもありません。「ファッション」を売るとは、自分に似合うものは何かを探し当ててもらうこと、ひいては自分がどんなふうになりたいのかというイメージを売ることなのです。
Amazonや楽天のユーザーインターフェースでは、それを実現することはとても難しい。そこで出てくるのが、「クロスメディア」というキーワードです。インターネットというメディアと、雑誌、テレビ、ファッションショーなどのイベント、実店舗を持つアパレルブランド等の既存メディアを融合させる仕組み。それがクロスメディアのEコマースです。
クロスメディアで使用される媒体は、既存のメディアです。その特徴は、
- 「個」をターゲットとするインターネットと異なり、ある程度のマスを相手にしている
- パーソナライズを基本とするインターネットと異なり、それを見る人・そこを訪れる人に同じ体験(Look&Feel)を与える
- 断片的なコンテンツが浮遊するインターネットと異なり、ストーリー/文脈を持っている
これらの要素を包含しているからこそ、流行が生まれる。流行があるからこそ、その流行の中に、なりたい自分の姿を描くことができる。なりたい自分の姿をそこに見ることができるから、それを実現するために商品を買う。流行とは、人の欲求を引き出し、それを購入すべきだと確信させる購買決定要因なのです。
既存のメディアは商品の検索や決済の機能はありません。逆にE従来のEコマースでは、流行を生み出すことができませんでした。Eコマースへのクロスメディア導入は、今まで売ることのできなかった「イメージ」や「センス」を売ることを可能にしたという点で画期的な事例であったといえます。
しかし、「イメージ」や「センス」を売ることは、クロスメディアの専売特許ではありません。何が欲しいのかわからないけれど、欲しいという欲求を起こさせる仕組みは、実はほかにもあります。それこそが、スマートフォンとソーシャルメディアが作り出す、ストーリー/文脈の中での消費、つまりソーシャルコマースです。
スマホ・ソーシャル時代
ここまで考察してきたように、Eコマースは成熟しています。そんな時代にあって、Eコマースは今後どんな可能性を取りうるのでしょうか。私は、次の4つの可能性を提言します。
- Eコマースのメリットを充実させる仕組み
- Eコマースの欠点を補う仕組み
- コンテキスト消費を促す仕組み(オウンドメディア)
- コンテキスト消費を促す仕組み(ソーシャルコマース)
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